なぜ都市は発展するのか?

海外旅行に行ったり外国で働いたりしていると、同じサービスを受けているにも関わらずなぜかかるコストがこうも違うのだろうか、ということが疑問として湧いてきて、日本の会社で給料もらって、タイに暮らすのが最強じゃない?みたいな話になる。ひとえに世界のみなさんが日本で製造された製品が欲しいので、日本円に対する需要が高く、円の価値が高いためにその恩恵を受けているわけだけれど、ガーナの通貨セディ(GHS)のようにだれも別にガーナで作られた製品が欲しくない、ひいては需要が少ない通貨は悲惨である。
最近(2014年12月)でこそ1USD=3.2GHS前後で安定しているものの(外交筋の話によるとIMFが通貨安定のために関与しているとか)、私がガーナに赴任した2014年1月ごろ1USD=2.5GHSだったものが2014年9月ごろには1USD=3.7GHSと日本のように政策的に通貨安を誘導したわけでもないにも関わらず、その価値はドルに対して30%も下落した。

こういった国ごとの経済についても面白いのだけれど、分析としてはちょっと荒く、都市単位の経済について着目したほうが地域復興などに対しては参考になる。そのような都市単位での経済について着目したのが、Jane Jacobsの「発展する地域・衰退する地域」(原題:”Cities and the wealth of Nations: principles of Economic Life”)である。
彼女はまず初めに1960年代までに発生した主だった経済学派の主張の矛盾点を指摘する(この記述だけでもマクロ経済学の歴史をなぞれるだけでなく、それなりにうなずける定性的な反論を楽しむことが出来る)。
次に政府の公共投資の継続性のなさを指摘し、発展している都市、衰退している都市が陥っている状況を歴史的経緯も交えた上で記述する(ちなみに日本に関する記述もそれなりにある)。

「都市は最大の発明である」、「年収は住むところで決まる」でも記述されていることだが、いまのところなぜ「発展する都市」がうまれるのか、ということに関しては誰も解明できていない。発展の要素となったと思われる事象(法的優遇措置や大学、地政学的条件)については記述できるが、ではシリコンバレーが抱える要素を再現してやれば、第二のシリコンバレーを作れるか?というと作れない。

しかし発展に必要な要素には知的な人々や高度な技術を持った人々が集まる仕組みやインセンティブが働いている、ということは示唆されている。サービス業や飲食店はあくまでも外貨を稼いできた人々のおこぼれで食べており、1人の知的労働者が居ることにより、5人のサービス業の人が食べていけることが出来る。また、知的労働者にとっても、多くの知的労働者が集まっている地域ではそのような初期投資が高いサービスでも、一人当たりの固定費が安くなるため、安価で質の高いサービスを受けられるという利点がある(「年収は住むところで決まる」より)。

ともあれ、「都市」に興味のある方にはこの3冊、非常におすすめです。